お姫様と若頭様。【完】
【宗志side】
何故彼女はいつもいつも、
誰かを庇ってしまうのだろうか?
それが宿命であるかの如く、
いつも彼女は俺たちの手から
するりするりと抜けて、
真っ先に狙われた人を庇う。
彼女の速さじゃ
誰も着いていけない。
この惨状が、
何よりも俺らの心を深く抉る。
あの時のことがフラッシュバックする。
それは茶芽も同じだろう。
美紀や功明がここにいなかったことが
まだ幸いだったかもしれない。
あいつらがここにいたら、
きっと取り乱して我を無くしてた。
彼女を溺愛しているからこそ、
彼女のことになるとデリケートだ。
もうこんな苦しみ、
あいつらに与えたくなかったのにな。
もう何度目だよ?
お前が傷つくのは。
お前が傷ついて、
俺たちは少しも傷ついてない。
それが俺たちにとって
どれだけ苦しいことか、
お前は知らないだろう、ユズ?