お姫様と若頭様。【完】
Take10
【茶芽side】
もしここにあいつら…功明と美紀が
いたらと思うと鳥肌が立つ。
横たわるあいつは真っ赤に染まっていて
無情にもあの時と重なった。
この場面を誰よりも深く覚えているのは
他でもないあいつ…ユズ自身で、
仲間が、最愛の人が傷つくことが
どれだけ辛いことなのか、
1番よくわかっていたはずなのに…。
…いや、
よくわかっているあいつだからこそ、
他の奴にあんな思い
させたくなかったんだろうな。
もしあのまま陣宮が撃たれていたら、
確実に彩狼は終わりで、
何よりあの姫が酷かっただろう。
そんな彼女をあの時の自分と重ねて
咄嗟に庇ったんだな…。
俺たちの気も知らねぇで…ッ!
俺はまだ平気だ。
こうやって冷静に
考えられているんだから。