お姫様と若頭様。【完】

【茶芽side】


あの日から2週間、
一行に目を覚まさないユズ。


傷は段々と癒えてきているはずなのに
目を覚ます素振りすら見せない。






あの後、彩狼をとにかく帰らせて
ユズを掛り付けの病院に運んだ。



バタバタしていた所為で、
赤司や國館には逃げられてしまった。


ユズのから事前に生徒会に入っている
『國館 東佐良』が闇虎の正体だと
聞いていた。


情報を誰よりも早く手に入れるユズは、
そのことを知ってあいつを警戒してた。






そんな奴を取り逃がしちまうなんて…。




正直、ユズはあそこには
来るべきじゃなかったと思っている。


彩狼が危ないことはわかっていた。


ユズがいつも仲間を庇って
自分が犠牲になることもわかってた。




…それなのに、その2つは何処か
別物の様に捉えていたんだ。



その2つを重ねれば、ユズがこうなる
ことは予測出来ていたのに。






俺の判断ミスだったんだ。




ユズが目を覚まさない所為で、
ソウはかなり弱ってる。


毎日毎日朝から晩まで
学校へも行かずにユズの側にいる。






側で手を握って祈るだけ…。


自分は何も出来ないのだと
凄く悔やんでいる。







まだ美紀や功明はこのことを知らない。




もしこれが知られてしまったら、
彩狼へ乗り込むかもしれない。


あいつらはユズが傷つくところを
何度も見てる。


見る度に、
あいつらはどんどんその後が酷くなる。





あいつらのあんな顔は
もう見たくないのに…。




真っ先にあいつは誰かの前に立って
自分の身体で誰かを守るんだ。


そんなあいつの背中に、
皆憧れているのに…。



本人は少しも気づいていないんだ。



自分なんて、と
自分を低く見ている。

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