お姫様と若頭様。【完】
なぜだろう?
なぜ、こんなにも怪しいことがたくさん
起きていたというのに。
なぜ全くその可能性を
疑いもしなかったのだろう。
冷静に考えて見たら、
茶芽のやりそうなことだ。
あいつが必死に隠している理由も
予想がつくのに。
もっと早く、
なぜ気付いてやれなかったのだろう?
あいつはたった1人で
苦しんでいたというのに。
俺たちとソウのことに板挟みにあって
それでも耐えていたというのに…。
こんな俺が、
『仲間だろ?少しは信用しろよ』
なんて、到底言えたもんじゃないな。
あいつの激しい女遊びが、
壊されて悲惨なあの部屋が、
何よりあの寂しそうで切なげな
あの表情が、
あいつの苦しみを
物語っていたというのに。