お姫様と若頭様。【完】





あの日から数週間経った。



もしかしたらもうあの人は私のことを
忘れてしまったのかなって考えていた。


たった一度会っただけの人。


こんな別に可愛くもない私のことなんて
覚えてないんだろうなぁ。







そして放課後、なんだかあの人にまた
会いたくなって街の方へ来ていた。




「ねぇねぇそこの君!」

とまたここで声をかけられた。


なぜいつも
絡んでくる人がいるのだろう?




「ちょっと君、俺と一緒に遊ばない?」


普通初対面の人に遊ばない?なんて
声かける?

随分と社交的な人だなぁ。



「すみません、今人を探しているので」


やんわり断ろうとすると
腕を掴んで体を引き寄せられた。


「えぇ?いいじゃん、俺と遊ぼうよ。



あっ、なんなら俺が探してあげるって」



「えっでも…良いんですか?」


知らない人に人探しを手伝ってもらうだ
なんて正直気が引けるけど…。

人数が多い方が
早く見つかるかもしれないし…。



「あっ俺の友達があっちにいるからさ、
一緒に来てくんね?

人数多い方が絶対早いって」


そう言って路地裏の方へ
腕を引っ張られる。






「おーい、見ろよ」


そう男が声を掛けると裏から出て来た
また更に多い男達。

ざっと5人ほど。


こんなに人要らないけど…。



「あの探してるの男の人なんですけど」

とあの人の特徴を言おうとすると、



「うわぁ、超レベル高い」

「マジでこの女ヤっちゃっていいの?」

「うっわ、超可愛い」

「誰先にヤる?」

とわけの分からないことを言う人達。



「あのっ、人探しを…」


「あっれぇ?

本当に信じちゃった?」

と意地悪そうに笑う男。


「えっ…?」


「普通人探しなんて
手伝うわけないだろ」

「うっわこの子超純粋〜」

「マジで啼かせてぇ」

と勝手に盛り上がる男達。



「な…に…言って…」

「だーかーらー!


俺らは探す気はねぇの」


そう言ってニヤニヤと厭らしい目で
私を見る男。


「あっ、あの私っ!」

そう言って後ずさろうとするも腕を掴まれているためそんなに距離は取れない。


「いやっ、離して…!」













私がそう叫んだ時ー



「離せよ」


その声は何処かで聞き覚えのある…



いや、私の探していた人の声。



"ヨル"


そう呼ばれている人。





そして彼はまた、
私を助けてくれた。


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