お姫様と若頭様。【完】
彼に連れられて街のカフェに入った。
なんとなく気まずくて無言。
でも席に着くと彼が先に話し出した。
「大丈夫?何もされてない?」
と本当に心配そうに聞いてくれる彼に、
気が緩みホッと息をついた。
「はい、大丈夫です。
この間も今日も、
本当にありがとうございました」
そう言ってペコっと
座ったままお辞儀した。
「君は俺が見る度に
誰かに絡まれてるよね」
「ははっ、なんでですかね?」
話してみると凄く優しくて温かい人で。
「またね」って言葉が現実になった。
「私今日、あなたに会えるかなって
ここに来たんです。
でも本当に会えるなんて」
本当は無理じゃないかって思ってた。
こんな広い世界で、会いたい、
しかも1度会っただけの人に
また会えるだなんて…。
「今度お礼をしたいんです。
2度もあなたに助けていただいて…」
「いやいや礼なんて!!気持ちだけ
ありがたく受け取っておくよ」
「いえ、そんなわけにはいきません!
人として、助けてもらってお礼をするのは当たり前です。
ただの私の自己満足に過ぎない
でしょうけど…」
「…うん、じゃあよろしく」
そうやってまたふわりと優しく笑う彼に
私の心の何処かがドキドキといった。
この笑顔、凄く好きだなぁなんて、普段
あまり感じない気持ちになっていた。