お姫様と若頭様。【完】
「…チッ」
舌打ち一つ溢すと
何やら不敵に笑った男。
そんな表情に悪い予感がし、
鳥肌が立った。
「お前の彼氏も余裕だなぁ。
彼女が自分の所為でこんな目に遭ってる
ってのによぉ」
「なっ…何が言いたいの?
…まさかっ!
ヨルに何かしたんじゃないでしょうね?
答えなさいッ!!」
やっと声を荒げた私に
ニヤリと笑った男は、
「俺について来い」
またさっきと同じ言葉を吐いた。
今度は私が拒否出来ないと
わかった上で。
「…ヨルには絶対、何もしないで」
私の言葉に笑みを深めて勿論と頷く。
「じゃあ少し眠っててもらうぜ」
「えっ…?」
そして急に口元をハンカチで抑えられ
薬品を嗅がされた。
その所為で、
段々と意識が朦朧として行く。
意識が途切れる前、最後に見たのは、
恨めしい程快晴な空だった。