お姫様と若頭様。【完】
ジリジリと詰め寄って来る男。
元々私を見下ろしていたし
私は繋がれていて逃げられないから
二人の距離は対してない。
その対してない距離をさらに縮めて来る
この男に無力な自分が悔しくなった。
指先が頬に触れようとした、
その時ーー
ーガチャ
入って来たのはまた初めて見る男の人。
なんか無口でクールな感じの
全身"黒"に包まれた威圧感のある男
「おい、刃牙-Jinga-、誰の許可とって
そいつに触れようとしてんだ?
そいつは王様に献上する…
いわば生贄だな。
喰うんだったら
あいつが飽きてからにしろよ。
じゃねぇと殺されっぞ」
そう言う彼の目は真剣そのもので、
冗談ではないと…
また私の中の危険信号が鳴った。
低めの声が余計に私の不安を煽る。
「…誰……なの?その人は」
私の小さく弱々しい声が
静かな空間に響いた。
「…あいつは黒豹-Kokuhyo-
そう簡単にあいつのテリトリーからは
逃げらんねぇよ」
黒…豹……。
初めて聞く名前だけど、
この人達はその人を恐れてる。
…きっと怖いんだろうなぁ。
他人事の様に考えていた時だった。
「ヒメ」