お姫様と若頭様。【完】
見た目からも、声音からも想像出来ない
"ヒメ"と呼ぶこの人は、
なんともその言葉は不釣り合いだ。
背が高く漆黒の瞳、髪、服装…
全てにおいて真っ黒。
さっき現れた人よりも黒がしっくりきて
とても深い黒…闇の様に見えた。
「ヒメ」
何も返事をしない私に
もう一度呼びかける彼。
なんて返事をしたものかと困惑する。
「私はなぜここにつれて来られたの?」
1番疑問に思っていたことを
ストレートに聞いてみる。
私の声にジッと見て来る彼。
数秒間、目と目が合う。
「君が紅蓮の姫だから」
口を開いたのは彼で、
それも予想のできることだった。
……紅蓮…姫……
誰か助けに来てくれるだろうか?
私なんかを助けてくれる人なんて、
現れるのだろうか?