お姫様と若頭様。【完】
【夕梛side】
お嬢様は我慢し過ぎだ。
今日帰って来た時もなんだか、
凄く疲れた顔をしていた。
長年寄り添った者として、相談に乗って
しっかり休ませてあげたい反面、
執事として、主にあの方がお見えになる
ことを伝えなくてはいけない。
…どうしたらいいのか、
本当に分からない。
執事として後者を優先させるべきだが、
ずっと彼女を見ていると
前者を優先させたくなるのだ。
こんなにも我慢に我慢を重ねて、
…しかもそれは幼い頃からで……。
彼女はあと何年、何回我慢をしたら
解放してもらえるのだろうか?
…いや"峯ヶ濱"として生まれて来た以上
死ぬまで解放されることはないだろう。
まだこんなにも幼い彼女を、
ここまで大人にさせてしまった峯ヶ濱は
本当に恐ろしい。
その力は計り知れないものだと
今更ながら実感する。
そして、そんな力に押し潰されないで
懸命に生きる彼女の逞しさが、
彼女を誰よりも美しくさせるのだろう。
強かで、誰よりも繊細で、美しい彼女を
なぜ誰も"1人の人間"として
見てあげないのだろうか?
こんなにも…
必死に生きていると言うのに。