お姫様と若頭様。【完】

【楪side】


ーガチャ



「失礼致します。

奇十院ーKujuinー様が
いらっしゃいました」


落ち着いた夕梛の声。



…でも分かるよ。


そんな怒らないでよ、夕梛。




本当に少しだけだけど
いつもより口調の強い夕梛。


その原因は間違いなく、
夕梛の後ろにいる彼で…。


私の代わりに
いつだって夕梛が怒ってくれる。



それだけで私は少し救われてるの。











「楪」


彼の声が響く。


それにすら正直、嫌悪感を拭えない。




「態々ご足労頂き、
ありがとうございます、奇十院様」


ぺこりとお辞儀をし、彼を見る。


容姿は完璧。


家柄も、頭脳も、全て。










…うわべだけは。








「お茶をお持ち致しますので
少々お待ちください」


夕梛が綺麗なお辞儀をして去る。


その背中に何度、
行かないでと叫びそうになったことか。


毎回毎回、
私も諦めが悪すぎるのね。


< 191 / 371 >

この作品をシェア

pagetop