お姫様と若頭様。【完】
彼が私に触れた。
それだけでピクリと反応する身体。
それを楽しそうに見る彼。
…それと同時に鳥肌も立ち、
背中には嫌な汗が流れた気がした。
「楪…」
艶っぽく私を呼ぶ彼。
…いや、やめて。
私に触らないで。
「楪…」
「い…や…」
「…えっ?」
そしてまた彼が私の頬に触れた時、
「嫌っ!」
彼の手を払い除けてしまった。
それに一瞬放心しながらも
途端に怒鳴る彼。
彼は私にとって、峯ヶ濱にとって、
恐怖でしかない。
それため私はどうしても、
家のためとわかっていても、
彼に身体を許すことが出来ないのだ。
それだけではない。
あの人の…ヨルの顔が何度も頭を過ぎり
その先へは絶対に行かせまいと
身体が拒否しているのだ。
……ヨル、どうか助けて。
知られたくない。
私がこんなことをされているなんて。
…でも、
どうしても"ヨルに"助けて欲しい。
矛盾しているけどでも、
私は愛する人にいつだって
助けて欲しいと心の中で叫んでいる。