お姫様と若頭様。【完】


ある日、俺の耳に噂が届いた。



神原朱鳥のファンが結城美華に嫉妬して
彼女を傷つけた、と。




それで男子たちは学園のアイドルを
傷つけられたと怒り、
そのファンたちを探した。




…どうせあいつらも、
その"元凶"である"神原"には言えない。


何かしたら
制裁が下るとわかっているから。






…でも。




「ごめんね、急に呼び出して。



……僕の所為で傷ついたって聞いた。


本当にすまなかった」


彼女の目を見て謝る。


するとほんのりと頬を染め、

「ううん、最近神原君私のこと避けてた
みたいだったから、話せて嬉しい」

何もかもが嘘っぽく見える。



どうせ俺を騙してたんだろ、と。


このくらいでへこたれんな、
もっと俺を楽しませろ、と。



「ごめんね、結城さん、
もう君を傷つけたくなかった。

一緒にいて君が傷つくなら、
もういっそ、離れてしまった方が…
「私は!…私は大丈夫だよ、神原君。

このくらいのこと、慣れてるの。


前、男の子と一緒にいればイイだろって
女の子たちによく言われてた。


こういう嫌がらせなんてよくある事で。



…だから私は神原君と一緒にいたいの」



…何こいつ、モテる自慢?


女子はモテる自分に嫉妬して嫌がらせ?
…そんな被害者意識反吐が出る。







そして彼女はいつかのように
体をモジモジとさせた。

頬を赤く染めて。







「私…神原君が好きなの」








そんな言葉をこの女に聞いても喜ばない
俺は男たちの反感を買うだろう。



でもまぁこの女が言ってるのは
"神原"が好きなんだろ、俺じゃなくて。
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