お姫様と若頭様。【完】
…今日も"あの人"を拒絶してしまった。
また夕梛が叱られる。
主を早く説得しろ、と。
私が拒絶する度に、
叱られるのは決まって夕梛。
…いくら大切な取引先の方とは言え、
身体を許すことなんて出来ない。
それに私にはヨルがいる。
…もう彼らとの約束で数日しか
一緒にいることは出来ないけれど。
離れなければならない最後の瞬間まで、
1秒でも長く私は彼と一緒にいたい。
仲間と一緒にいたい。
本当はこの境遇から逃げられないことは
わかっていたの。
幼い頃から教えられてきたから。
"あなたは次期後継者よ"
"ここを救えるのはあなただけ"
"峯ヶ濱の名に恥じないように"
耳にタコができるほど聞いた
この言葉たちは、
きっと一生私の記憶に残るだろう。
きっと彼らに出会わなかったとしても、
ヨルたちとは離れなければならかった。
遅かれ早かれ、
お父様が排除していたと思う。
その時期がほんの少し早まっただけ。
…辛くなんてない。
そう言い聞かせなきゃ、
ヨルと別れることなんて絶対出来ない。