お姫様と若頭様。【完】
プルルループルルルー
誰かの携帯が鳴った。
幹部室には今、幹部全員が揃っていて、
皆がその音源を見た。
「あ、…私だ」
「なんだよ、楪。
女っぽくない音だなぁ!!
っていうか珍しいな〜!
お前が携帯使ってんの初めて見た」
「なによっ徹!
悪かったわね、女っぽくなくてぇ!!
…そもそも顔がダメだからよ…。
顔が可愛かったら
なにやっても女っぽく見えるっつーの!
ねぇねぇヨル〜徹がいじめる〜」
そう言ってくっつくと
ふわふわと頭を撫でてくれるヨル。
「ん〜気持ちいぃ〜!
ふわふわ好き〜」
そう言って背の高いヨルを見上げて
微笑むとなぜか顔を逸らされた。
「むむっ!
なにヨルまで!!
…もう知〜らないっ!」
そう言ってプイッとそっぽを向くと
慌て出すヨル。
ふふっ、こういうところを見ると
凄く安心する。
私に機嫌損ねられたらヨルは嫌なんだ。
「ヨルも大変だなぁ」
「マジで楪は小悪魔だよなぁ」
そんな声は私の耳に届かなかった。
ただただヨルの想いを実感していて、
周りに目が向かなかった。
耳を傾けることも、
これから起こる"闇"さえも忘れ、
幸せに浸っていた…。
「そう言えば楪、
お前さっき携帯鳴ってなかったか?」
「あっ、そうだった!
あれはメールの音だから
気にしてなかったけど…。
皆ここにいるから紅蓮じゃないね。
…親は……プライベート用は絶対ないし
……誰だろう?」
この携帯には本当に限られた人しか
登録されていなくて、
基本的に友達と呼ばれる人がいない私は
この機械を使うのはほぼゼロに近い。
私が携帯を使うのなんて仕事用だけだし
皆の前じゃ使わない。
「あれ?楪って携帯使えんの?
しかも打つの速ぇ」
「…そう?
私普段携帯2つ持ってて
そっちを使ってるからかなぁ?」
「え、何!お前携帯2個持ってんの?」
「う、うん…仕事用とプライベート用」
「うっわカッケーな…楪だけど」
「おいおい、徹、
そう喧嘩吹っかけんじゃねぇよ。
そのくらいにしとけ」
「うぅっ…碧志〜!大好きっ!!」
そう言って碧志に抱きつくと
碧志は慌てたように私を引き剥がした。
「お、おい楪!
わかったから離れろ。な?」
「ん〜なんでそんなに焦ってるのさ!」
キッと碧志を睨むと
ヨル同様逸らされた。
「おい、楪」
大王様の、声がした。