お姫様と若頭様。【完】










"またね"













やっぱり最後までそれは言えなくて。



向けられたヨルの背中に何度も謝って
"さよなら"も面と向かって言えぬまま
その時は終わってしまった。



この手に僅かに残るヨルの温もり。


寒くもないのに体が震える。


あんなに温めてくれてたヨルが、
もう手の届かない所へ
行ってしまった気がしたから。


変だね。
離れて行くのは私の方なのに。




でもこの1週間でよくわかったよ。














やっぱり私は、皆と離れるべきだって。



きっと皆は私が危険な目に遭ったら
助けてくれるんだと思う。


今回のことだってきっとそう。

私が黒蓮に行くことを止めるだろう。



…でもだからこそ、
余計に大事だと思ってしまうの。






皆のためじゃなくて、自分のため。
ただの自己満足。




あなたの顔を最後に見れてよかった。


元気でいてくれさえすれば、
私は満足だから。


好きと言ったら好きと返してくれて、
愛してると言われたら愛してると返す。


そんなあなたとのやりとりが、
私はどうしようもなく好きだった。


どうしようもなくあなたを愛してた。








だからこそ、
私はサヨナラが言えなかった。








< 222 / 371 >

この作品をシェア

pagetop