お姫様と若頭様。【完】
"またね"
やっぱり最後までそれは言えなくて。
向けられたヨルの背中に何度も謝って
"さよなら"も面と向かって言えぬまま
その時は終わってしまった。
この手に僅かに残るヨルの温もり。
寒くもないのに体が震える。
あんなに温めてくれてたヨルが、
もう手の届かない所へ
行ってしまった気がしたから。
変だね。
離れて行くのは私の方なのに。
でもこの1週間でよくわかったよ。
やっぱり私は、皆と離れるべきだって。
きっと皆は私が危険な目に遭ったら
助けてくれるんだと思う。
今回のことだってきっとそう。
私が黒蓮に行くことを止めるだろう。
…でもだからこそ、
余計に大事だと思ってしまうの。
皆のためじゃなくて、自分のため。
ただの自己満足。
あなたの顔を最後に見れてよかった。
元気でいてくれさえすれば、
私は満足だから。
好きと言ったら好きと返してくれて、
愛してると言われたら愛してると返す。
そんなあなたとのやりとりが、
私はどうしようもなく好きだった。
どうしようもなくあなたを愛してた。
だからこそ、
私はサヨナラが言えなかった。