お姫様と若頭様。【完】
【楪side】
「…皆に手を出したりしませんよね?
約束は守ってくれますよね?」
「あぁ、勿論だ」
あの日、紅蓮の前から姿を消した日、
私は黒蓮の姫となった。
あの日の2つの大きな出来事は、
1ヶ月経った今でも頭では鮮明だ。
あの人は無理に手を出してくるわけでも
なく、至って普通だ。
私が嫌がることは絶対しないし、
干渉もして来ない。
そもそも黒蓮は皆、
仲の良く騒がしかった紅蓮とは違い
あまり話さないのだ。
立場的なものがはっきりしていて、
上は上、下は下と見てすぐわかる。
それは服装などの見た目であっても、
行動であっても。
挨拶はしっかりして、
雑用などは全て下の人達がやって。
皆で協力したり、上下が普段あまり感じられない紅蓮とはまるで違う。
それは紅蓮の人達が礼儀知らずとか
馴れ馴れしいとかじゃなくて、
良い意味でフレンドリーなのだ。
敬語はちゃんと使うけど、
上の人が下の人ばかりにならないように
考慮してて、雑用=下の人にならない。
何もかも、違う。
…どうしてこうも、
紅蓮と比べてしまうのだろう。