お姫様と若頭様。【完】
あれから何分経ったかなんて
わからない。
それは何分だったか、
何十分だったか、
何時間だったか、
何十時間だったか、
何日だったか、
もしかしたら何週間もしたのか…。
そんな時間の感覚さえ、
私の体から抜け落ちたように
何も感じない。
この場の空気も、
温度も、
匂いも、
音も、
全て…全て感じない。
慌ただしく動く医師や看護師に、
たくさんの機械。
そして"時間"
私を置いて、
周りだけが目まぐるしく進んで行った。
頬に流れていた涙は
枯れることを知らない。
1筋の痕を残して、
消えては流れ、そしてまた消える。
私があの後感じていたのは
強い絶望と深い悲しみ、憎しみ、怒り、
後悔、孤独、…多くの闇。
それの向けられる先は全て"自分自身"
あの時、あの時、と考えては
時間はなぜ戻らないのかと自問自答。
どれだけ手を強く握っても、
唇を噛み締めても、
涙を流しても、
体を強く掻いても、
痛みなんて全く感じなかった。
ヨルほどの痛みを、
私は知らない。
ヨルのこと…何も知らない。
いつも一緒にいたのに、
知っているのはいつもヨルだけだった。
ヨルは私のことなんでも知ってた。
…私はヨルのこと、
全然知ろうとしなかった。
こんなんで彼女なんて…失格だよね。
手にこびり付いたヨルの血は、
まるで私を責めるかのようにベッタリと
私から離れない。
"お前が俺を殺した"
まるでそう言われているようだった。