お姫様と若頭様。【完】
ーある日の夕方ー
ユズが眠りについて丁度半年の今日、
ユズの病室には紅蓮幹部が
全員揃っていた。
「ソウ、理事長から伝言よ。
早く戻って来なさいって。
いくら私たちの先代と言えど、
あたりに学校を休み過ぎたのよ。
ユズのことが心配なのはわかる。
でももう半年よ?
私たちも今は出来ることをしなきゃ。
最近彩狼が私たちを嗅ぎ回ってる。
ユズのこと、気にしてるんだよ」
美紀が正直一番しっかりしていて
正論を言ってるのはわかる。
だからって、今ユズの手を離せるほど
俺は強くはない。
「学校のことは…別にいい。
留年でもなんでも、勝手にすりゃいい。
今ユズの手を離すより、ずっといい。
テストで点を取れば留年はしない。
一応あの学校はそうだろ?
それでも留年にしたけりゃ
すりゃいいだろ。
どうせユズも目が覚めてもそうなる。
それにこいつには今、
あの人はいないんだ。
他に誰がこいつの側にいてやれるって
言うんだよ…。
あの時のあいつを知るのは俺だけだ」
本当のこと知ったらこいつらもユズを
可哀想とか思うんだろ?
ユズがどれほど苦しんで、
耐えて来たかも知らないくせに
可哀想の一言で片付けるなんて…。
彼女が今も苦しんでいるのは
本当は顔を見ればわかった。
いつも無表情の彼女だけど、
長年の勘なのかわかるんだ。
彼女が総長室で寝てるのは、
きっとあの人があそこにいたからだ。
以前よく2人であの部屋にいた。
あの頃を思い出したくて
よくあの部屋で寝る彼女。
でも本当はそれを思い出すたびあの光景が浮かんで毎回魘されていた。
彼女が寝るのは、
寝不足やら貧血やらで気絶しているだけの時がほとんどだった。
俺なんかじゃ、
彼女の傷は全く癒せなかった。