お姫様と若頭様。【完】
彼女にとってきっと、
あの人の代わりなんていないのだろう。
誰かの代わりなんてものを
彼女が受け入れるとも思えないが。
それでも、
彼女が傷つくよりずっと良かった。
彼女が傷ついているのを知ってるから
黙っていたけど、
彼女は本当は温もりを求めていたんだ。
彼女はよく温もりを求めて、
夜によく倉庫へ来ていた。
それに家でも"家の為に"と用意された
男と夜を共に過ごすことも増えた。
以前あの人がいた頃なら絶対、
受け入れることはなかったのに。
前に何度か会ったことのある
あの夕梛とかいう執事。
俺と同じで酷く心配した様子で
ユズを見ていた。
一度話すとその原因はその男と家の事情にあったらしく、
その男と事情について聞いた。
まさか彼女があの人以外を受け入れるなんて…あの時は酷く戸惑った。
身体を許すのは
あの人だけだと思っていたから。
家の為にと我慢する彼女は
どれほどその運命を恨んだか…。
こうやって目覚めないのも、
本当はどこかで納得がいった。