お姫様と若頭様。【完】
【楪side】
目が覚めると白すぎる世界。
なぜかこの場所には
胸が締め付けられた。
目を開け辺りを見渡すと驚いたように
私を見る人たち。
誰も…誰も知らない。
私の手を強く握るこの人も、
その人の後ろに立つ人も、
少し離れた所でこちらを見ている人も、
今近くに寄って来た人も、
誰も…誰も知らないのに、
なぜこの人たちは私を知っているの?
ここには正直いたくない。
こんな場所嫌…。
ここにいると苦しい。
気付くと私は凱瑠の名前を呼んでいた。
自分が何か、とても大切なものを
忘れているとも知らずにーー。