お姫様と若頭様。【完】
「…は……ゅず……楪!」
「ぅ…ん…」
名前を呼ぶ声がして、
ゆっくりと目を開ける。
「あ…ぇっと……」
誰…だろう?
整った顔立ちと完璧なスタイル、
優しく私を揺する大きな手。
「俺だよ、峯ヶ濱。わかるか?」
「ごめ…なさぃ……」
私を呼んでいたのはどうやら凱瑠で、
揺すっていたのは別人らしい。
「こいつは陣宮 泪っていうんだ。
学校でお前が会長、
こいつが副会長だ。
どうしてもこいつらが居場所教えろって
煩くてよ〜。
仕方ないから陣宮だけって条件で
連れて来た」
私の…居場所……。
ううん、ここは彼女の居場所だ。
そっ…か。
本物の私は生徒会長してたんだ。
「え…っと峯ヶ濱です。
体調が回復次第復帰する予定なので
その時はよろしくお願いしますね」
峯ヶ濱 楪とは名乗れない。
だって私は、
本当の彼女じゃない…。
「何か用…ですか?」
この人にとって、
本物の私はどんなだった?
本物の私にとって、
この人はどんなだった?
視点が違えば印象も違う。
本物の私はこの人をなんて呼んでた?
本物の私はどんな風に話してた?
どんな風に行動して、
どんな風に思われてた?
頭が…痛い。