お姫様と若頭様。【完】

【凱瑠side】


笑ったかと思ったら急に声を低くして
暗くなる彼女。


何もかも背負い込んだその小さな背中。



あいつは自分を痛めつけてる。



もっと自分を大事にしろよ、楪。








"失ってからじゃ遅い"




彼女が誰よりもそれを理解してる。






ープルルルル


「はい、もしもし」


「あ、凱瑠?

楪どうだった?」


「あんま食べたりしてないし、

授業中寝てたらしいから
夜寝れてないっぽいっすよ」


開口1番に楪の心配。


まず名前名乗んだろ。


「はぁっ!?

…チッ、またかよ。


……これ以上痩せてどうすんだよ…」


急にイライラし出した聡さん。

楪の前じゃこんな態度とらねぇなんて
どんだけ楪溺愛してんだ。


…まぁ俺も人のこと言えねぇか。




「顔色も良くなかったようですし
少し心配ですね。


この間の体育は見学してたし、
また細くなってて…。






"失ってからじゃ遅い"って
言われたんです。




あいつまだ…いや、前以上に
あのこと引きずってますよ。






…日に日にそれが悪化してる」


笑いもしない、
泣きもしない。





だからこそあいつが心配で心配で
仕方ない。


今にも壊れてしまいそうで、

過去という"彼女自身"に触れたら
今にも崩れてしまいそうで…。




今の彼女を作ってんのは間違いなく




"彼女の闇"






< 28 / 371 >

この作品をシェア

pagetop