お姫様と若頭様。【完】




ー数分後ー


「ユズ、どうしたんですか?」


やっと落ち着き椅子に腰掛けながら
凱瑠さんに問う。


(因みに陣宮は楪が寝たからと帰った)





「…思い出したみたい……なんだ」


「えっ…」


驚きと、そして嬉しさと。

様々な思いが頭を駆け巡る。


やっとこれでまた、
ソウって呼んでくれるんだ。


ユズの俺を呼ぶあの声を想像して
自然と口角が上がる。




「なにがきっかけだったかは解らねぇ。



ただあいつ…
自分が殺したって言ったんだ。

もう…いないって」



そう言われて思い出すのは
やはりヨルさんで…。


ユズの中で何よりも大きな存在。


あの人がユズから消えることは
一生ない。


こうやって記憶をなくした今でさえ
あの人はユズの中にいたのだから。



「ユズは…あの人を誰よりも……きっと
自分よりも愛し、大切に思ってました。



そしてあの人もまた、そうでした。


偶然出会った2人はたった数ヶ月という
とても短い間で恋に落ち愛しあった。

そして…引き裂かれた。


あの人の名前をユズの前で出すのは
俺らの中で今も厳禁です。

あの頃いたメンバーも、
そうでないメンバーも。

まぁ最も、あの頃いたメンバーはあれが
きっかけで殆どいなくなりましたが。



誰も彼女を責めていません。


あの頃も、そして今も。

それが彼女にとって
負担だったようですが。



俺らが…ユズを壊したんですね」


自ら危険に飲まれるユズ。


見て見ぬ振りなんて出来ない紅蓮。


皆を守ろうとするユズを、
また更に皆が守ろうとした。



でもやはり、
傷つくのはいつもユズだった。


< 286 / 371 >

この作品をシェア

pagetop