お姫様と若頭様。【完】
「大丈夫?
仕事溜まっちゃってるの?」
「大丈夫だよ、心配しないで。
ちゃんと終わったら寝るよ」
きっと私には投げ出すことなんて出来なくて、投げ出すことを許されない。
それが峯ヶ濱を背負った私の宿命だ。
もしも、
もしも私の記憶が戻らなかったとして
この1年の記憶を失ったとしたら、
その1年を過ごした私は
どうなるのだろうか?
その1年の記憶の中を
ずっと彷徨うのではないだろうか?
"私"という新たな存在が出来て、
"私"という元いた存在が追いやられた。
完全完璧に、悪いのは今の"私"だ。
だからと言って
どうしようもないのだけれど。
実を言うとここ最近全くと言っていい
ほど寝れていない。
その理由は、眠ることが
怖くなってしまったからだ。
眠れば"私"という存在が私を追い出そうと迫って来る夢を見る。
そして、また記憶がなくなったら…
記憶が戻ったら…と思ってしまう。
もし記憶がなくなったら新しい私が作られて今いる私はいなくなる。
それと同様、記憶が戻っても前の私が戻り私はいなくなる。
どちらに転んでも結局、
私には消える運命しかない。
そうならない為には、
私が記憶を取り戻さなければいい。
そうすればこのままずっと、
私は私でいられるのに…。