お姫様と若頭様。【完】




ユズに会いたくないわけじゃない。

ただ少し、会うのが怖かっただけ。


ユズを見て、早く思い出せと
責めてしまうのではないか?

今のユズを偽物だと
言ってしまうのではないか?

そう思うと足が竦み、
ユズに会うことが出来なくなっていた。


前はいつも側にいて、
彼女が起きることを願ってた。

毎日毎日、側にいた。


でも彼女が目覚めて、
2度も記憶を失って、

とうとう俺は会えなくなってしまった。


また忘れられるという恐怖と、
池谷さんと呼ばれる嫌悪。



きっとなによりも、
そのことがかなり堪えていた。








本当はずっと気づいてた。


ずっと胸の中に押し込めて、
知らないふりをしていた。





だけどユズが記憶をなくしたことを知り
ユズをユズと思えなくなった。




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