お姫様と若頭様。【完】


彼女のことが嫌いとか
そんなわけじゃなくて、

ただ受け入れられないだけ。


見た目なんて全く変わっていないけど、
俺が好きになったのは内面だから。



好きになったのはいつからかなんて
はっきりとは覚えてないけど、

あの人のように
一目惚れでなかったのは確かだ。


別にあの人が見た目でユズを好きになったと言っているわけではないけど、

あの人は人を見極める能力があったから
上手くいったんだと思う。


紅蓮は皆顔を明かしてはいないけど、
俺のこの見た目と家柄で悩んだ。



ただユズはそんなことも気にせず、
周りにも気にさせない、
あの堂々としているところに惹かれた。




自分にはないものを、
彼女が持っている気がした。




誰もが羨み、妬み、歪む世界で、

ユズは凛としていて、
誰よりも輝いていた。


"内面が放つ輝き"

それが彼女のオーラとなって
表れていた。


"何もかも揃っている人"

彼女をそう見る人もたくさんいる。


でも、そうでないから彼女は時に
儚く見える。

家のことで悩むのも、
過去を切り離せないのも、
運命を恨むのも、
他人を羨んでいるのも、

皆知らないから
そんなことが言えるんだ。


彼女は誰よりも普通を求めていて、
誰よりコンプレックスが多い。


贅沢な悩みだって思う人もいるが、
きっと本人でなきゃ
その痛みはわからない。



凱瑠さんは誰より近くで、
彼女の苦しむ姿を見て来た。

だからこそユズには
あんなに過保護になっているんだ。


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