お姫様と若頭様。【完】



病院へ着き楪の病室へ向かうと
もぬけの殻。

「チッ…どこ行ったんだよ!」


急いで池谷に電話するも空振り。



どこだ…どこ行ったんだ…!!




手当たり次第探すけど
どこにもいない。


俺が1番近くにいたはずなのにあいつの
変化に気付いてやれなかった。


聡さんと守る約束して、
勝手に守ってる気になって…。


あいつの傷は思った以上に
深かったんだ。

心の奥底で…ずっと思ってたのか?

あいつにずっと罪悪感を抱いて…。


甘く見てたんだ。

きっと楪の心の傷は
もう結構癒えて来てるって思ってた。


前のようにとはいかないけど
笑うことも増えて、
紅蓮の皆を支え、支えられて。

あいつの表しか俺は見てなかった。


楪はずっとひとりで苦しんでた…。



聡さんとの約束を、
俺は簡単に破ったんだ…。



『楪からは絶対に目を離すな。

あの子は壊れやすい子だ。
目を話せば何をするかわからない。


…あの子のことをよろしく頼む』



楪を守ると誓ったあの日、
聡さんから言われた言葉。


"頼む"と言われた。

絶対に目を離すなと。


…あの人の言うことが間違っていたこと
なんて今まで1度もねぇ。




悪い方へ悪い方へといく思考を
遮るように頬を叩き、

より一層懸命に足を進めた。



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