お姫様と若頭様。【完】
ートゥルッ
ーピッ
「池谷!」
1コールで出る。
この電話を待ってたんだ。
『院内を探しましたが
見つかりません。
病室やその他の施設も
全てくまなく探しましたが…』
「チッもっとよく探せ!」
『あっ美紀、どうだった?』
『ダメ…全然見つからない。
もう…どこ行っちゃったのよ』
『美紀、引き続き探してくれ。
きっと見つかるから』
電話の向こうで話しているのか
声が聞こえて来る。
そっか、紅蓮幹部の金上か…。
確か楪と仲良かったよな。
『こんな時…ヨルさんならユズを見つけられたのかなぁ…?』
金上の涙声。
本気で楪を心配しているのがわかる。
「ヨル……あっ…」
そうだ、あの時楪はヨルに謝りに行くと言った。
あいつが思うヨルの近くってきっと…。
「池谷、楪の行きそうなところ、
取り敢えず行く。
いたら連絡するし、しろ」
池谷の返事も聞かず電話を切る。
そして全速力で駆け出した。
…間に合え…間に合ってくれ!