お姫様と若頭様。【完】
本当の目的は彼に近づきたかった
ってのもあるけど、
こいつに呼び出されたからだ。
まぁいろいろ思い出して
さっきは泣いてしまったけど…。
正直、全てを思い出したのは
こいつが原因だ。
記憶を失くす前こいつが近づいてこれるようにわざと情報に穴を作っておいた。
それもわざとやったとわからない
ほど小さな。
こいつがその情報の一つである
私の仮の携帯に連絡を入れて来て、
この間見た時全て思い出した。
まだ廊下の声だけでは
不可欠だったのだ。
「ずっとそこにいんの
わかってたんだよ。
さっさと出てこいよ」
「悪りぃな、姫さんがあまりに
感傷的なもんだから」
…私がないてたこと言ってんのか。
いるの知ってたとは言え何もしてこないってわかってるから油断してた。
「涙の原因、当ててやろうか?」
「……」
なぜか優位にいるこいつ。
私しかいないのを良いことに
随分と余裕だな。
「ーー宮藤 宵」
「…軽々しくその名を口にすんな」
低い声で威嚇する。
こいつなんかに
彼の名前を呼ばれたくない。
「まぁまぁそう気張るなって。
約束だろ?
…っていうより契約か。
交わす気になったんだろ?」
…不本意だけどコクリと頷く。
「ホントに…本当に元気なんだよね?
生きてるんだよね!?!」
私の為に
もう誰かが傷つくのは嫌だから。
自分の尻拭いは自分でする。
「あぁ、契約だからな。
なんなら契約書に
サインしてやってもいいぜ?」
「いや…いい。どうせお前らには
何も出来ないだろ?」
そう言うと困ったような顔で
首を振った赤司。
「ったく気の強い姫さんだねぇ」