お姫様と若頭様。【完】
放課後、予定通り校門前に堂々と横付けされた朝と同じ彩狼の車。
私たちが近づくと運転手さんが出て来て扉を開けてくれた。
「ありがとうございます。
…あっ、それと朝と、あと昨日も。
お礼も言わずにすみませんでした」
明らかに年上の、
それもかなり怖い顔の人。
だけどこうして私の運転を引き受けて
下さる、優しい人なのだろう。
するとその人は驚いたように
私を凝視して、それから直ぐに
はにかんだように笑った。
…彩狼は良い奴ばっか、って渚の言葉、
間違ってないかもしれない。
そして失礼しますと言って座席に座ると
隣には朝とは違う人。
少しチャラい感じで、色気満載の人。
昨日あの部屋にいた気がする。
「えっと、こんにちは…」
「おっ、来たか。
俺は飯島 羽だ。
よろしくなっ!」
ニカッと笑った顔は、どこか幼い。
「えっと…よろしくお願いします」
「あっ、そんな緊張すんな。
敬語とかも要らねぇし」
「えっ、はい…じゃなくて、うん」
そう言うと彼はまたニカッと笑った。
本当に少しだけど、
ワンコみたいな人だと思った。