お姫様と若頭様。【完】
【凱瑠side】
「もう始まったんだろーなぁ…」
俺のその言葉にピクリとも反応しない。
彼女は本当に興味なさそうで…。
「凱瑠は昔から本当に心配性ね。
ほっとけばそのうち終わるわ。
…それに組を動かしたそうじゃない。
賢明な判断ね。
それでも数は3分の1以下だけど」
まぁあいつらは数じゃねぇしな。
多分彼女もそう思ったのか
前より表情は明るい。
「…本当に行かないのか?楪」
するとチラッと視線をこっちに向けた
彼女。
「はぁ〜…。
凱瑠、私が首を突っ込んで良いことじゃ
ないのよ。
他の族、他の組同士の戦いに
赤の他人が手を出すなんて
卑怯だと思わない?」
「…一応お前のトコにも侵入してんだ。
完全に部外者ってわけでもねぇだろ。
あいつらが仕事の邪魔になんなら
潰したって誰も文句はねぇぞ?
それがお前の仕事なんだ。
それに今後紅蓮の邪魔になる。
丁度良いところに
彩狼がいたと思えばいい」
そう言ってニヤリと笑うと
呆れた様に首を振る彼女。
「凱瑠、あんたって本当…。
あぁもうっ…!
分かったわよ、行けば良いんでしょ?
行けば!!
…本当にちょっと見るだけよ。
仕事の邪魔になってからじゃ遅いし。
良いわ、今回は猫音としてじゃなく
紅蓮総長として観察に行くわ。
…これで満足?凱瑠」
最後をとにかく低い声で言った彼女。
珍しく怒っているのか、
殺気が漏れている。
でもまぁ、
何はともあれ
こいつがいるなら安心だろ。
そう思った俺は何も心配することなく
ベッドへとなだれ込み眠った。
実は最近心配で
夜あまり眠れなかったんだ。
きっと楪も俺のことを汲み取ってか
怒りながらも渋々承諾したんだな。
あんな風にしてるけど、
本当は仲間思いなんだ。
…本人が気づいていないだけで。