お姫様と若頭様。【完】
【夕梛side】
彼女の冷めた笑いを見た瞬間、
背筋が凍った。
普段の穏やかな彼女からは
絶対に想像できない表情(かお)。
彼女の闇は計り知れない。
俺だって彼女の闇のほんの一部しか
まだ知らない。
彼女は"自分"を見せたがらない。
むしろいつも隠そうとする。
俺が守らなければと強く思う。
彼女はいつも"あのこと"について
どう思っているのか?
ただひたすら良い顔して従って、
そこに彼女の感情はない。
今の彼女は脆過ぎるんだ。
今にも彼女は散ってしまいそうで、
ここに繋ぎ止めるために
必死に彼女の手をとった。
それによって彼女の表情は
少し和らいだように思う。
…俺じゃ、彼女の闇を取り除くこと
なんて不可能だ。