お姫様と若頭様。【完】
ふと何気無く彼女の手に視線を移すと、
手の甲にくっきり、跡があった。
昨日の朝はなかった。
…じゃあこれは"あの時"の……。
本当に強く手を握った所為か、
血の痕が付いている。
余程必死だったのか、
彼女はそれに気づいていない。
爪が手に食い込むなんて、
相当強く握らなきゃ無理だ。
…そして今ここに来て、この距離で
やっと気づいたが、唇にも血の痕が。
やっぱりこっちも"あの時"に切れたと
予想がつく。
彼女の『我慢の痕』だ。
あぁ、この姿だからよくわかる。
彼女絶対また痩せたな。
もうここまで来ると少し病的だ。
手足は細く今にも折れてしまいそう。
顔も頬が少し小さくなった。
お腹も線がはっきりしていて
もう前と後ろがくっ着きそうだ。
…こんなになるまで
彼女は悩んでいたのか。
主の健康状態を把握できないなんて、
俺、執事失格だな。