お姫様と若頭様。【完】
【楪side】
「笑って、夕梛。
…笑って……?」
そんな悲しそうな顔しないで。
私のために、そんなこと考えないで。
私は夕梛の笑顔が大好き。
屈託無く笑う、その無邪気な顔が。
いつも冷静で大人っぽくて、
私とは全く違う存在。
誰からも必要とされる、そんな存在。
彼の人柄がたくさんの人を集め、
たくさんの人を幸せにするって
私は信じてる。
…ねぇ、だから笑って?
私ももうあんな顔しないから。
だから笑って?
いつも通り"演じる"から。
"従順なお嬢様"
それがいつもの私。
みんなが望む、"私"
きっとみんなのこと恨んでない。
例えば"表"ばかりで
"本当"の"裏"の私を見てくれなくても。
私をそこにいさせてくれるだけ有難い。
居場所は自分で作るものじゃないと
私は思う。
居場所っていうのは、
本人の作りたいと思う気持ちと、
周りの作ってあげたいって気持ちが、
丁度重なって初めて、
できるものだと思う。
…それじゃあ私は無理か。
私にその気持ちがあっても、
みんなにはその気持ちがないもん。
…必要とされたいなんて言わないから、
だから少しでも存在に気づいて欲しい。
…ううん、気づかなくてもいい。
だから小さな、
本当に小さな隅の方でいいから、
私に居場所をください。