お姫様と若頭様。【完】
『…んでだよ!?!』
その俺の言葉を一瞬で飲み込んだ。
こいつの…飯塚の顔が、
あまりに真剣だったから。
そうか…
こいつは俺を巻き込みたくないのか。
…いや、こいつだけじゃない。
ここにいる幹部、
そして下っ端の奴らも、
今俺を庇うように、
相手に見えないようにして、
俺を隠すように立っていた。
俺がまだこの世界に完全に
足を踏み入れてないことを考慮してか、
俺を守ってくれてる。
この世界は一度でも足を踏み入れれば
後戻りはできない。
…俺のことを第一に考えてくれる
途轍もなく仲間思いで、
優しすぎるこいつら。
俺は本当はこういう奴らに憧れてた。
こんなに必死になって何かを出来る、
一途なこいつら。
誰かを守ることが
こんなにかっこいいことだなんて、
俺は今まで知らなかったんだ。
俺の考えを簡単に覆してしまうほど
こいつらは暗い世界で光り輝いている。
…こいつらは誰かの…
俺の光になっていることなんて、
気づきもしないんだろうな。