プリンセスと5人のナイト!?
シェアハウス。
2月の某日。学校が終わって帰って来た私。
その私の目に映ったのは音を立てながら崩れていく、私が昨日まで生活していたボロアパート"真城荘"。
前々からネーミングセンスもないし、こんなにボロいアパートだといつか潰れてしまうんじゃないかと思っていた。
………だけど。
本当に潰れてしまうなんて…!
崩れていくアパートの前で呆然と立ち尽くしていた私を引きずる様に自分の家へ連れてきた真城荘の大家、真城さん。
下の名前とかは知らない。
あんまり興味ないしね。
私がそんな事を思っているなんて知らないであろう真城さんは、こんな時でもハイテンションだ。
「いやー!参っちゃうよ、ホントに!ハッハー!」
……ハッハー!じゃないわよ!
ボロいながらにも結構住心地は良かったし、何より安心できる憩いの場だったのに。
しかも、家がなくなったと言う事は、住む所がないと言う事。………あれ?いえがない。イエがナイ。家が、ない。
……………………。
………………。
…………。
Noooooooooooooooo!
「ま、真城さんっ!家なくなっちゃったよ!?どーしてくれるのよ!まーしーろーさぁーんっ!」
ハッハー!と笑う真城さんの肩をグラグラと揺らす。
「いや、ごめんね?最近ナントカ財閥がショッピングセンターを建設するとかで、立ち退きを求められててさ。ずーっと拒否してたら無理矢理工事始められちゃったよー。」
肩を揺らされてるにも関わらず、再びハッハー!と笑う真城さん。
…ていうか。
ショッピングセンター?
建設?
もしかして…。
「真城さん?ちょっと席を外させて頂くわね。」
「…?あぁ。」
私は、真城さん家のお手洗い場を借りて、"ある場所"へ電話する。
プルルルル…
『……はい。』
「あら、田村?久しぶりね。」
『そのお声は…お嬢様!?』
「えぇ。」
『お嬢様ぁー!お久しぶりでございます!田村はもう、心配で心配で……。お屋敷へ帰って来られる気になられましたか?』
「その事なんだけど、今、パパっていらっしゃる?」
『だ、旦那様でございますか?』
「えぇ。その反応はやっぱりパパの仕業なのね。」
『い、いえ!旦那様は何もしておられません!』
「はぁ…。いいから早くパパに代わってちょうだい。」
『うぅ…。旦那様をお呼びしなさい…』
電話の向こうで田村が涙声ながらに誰かに指示を出している。
田村…貴方がそんなに悲しむことかしら…
『もしもし!?かんななのか!?』
「…パパ。」
『あぁ、かんな!元気だったかい?パパはスゴく寂しかったんだぞぉ!』
パパ…もういい年なんだから…恥ずかしい。
「パパ?私は元気だったわ。それより…」
『パパはかんなが元気ならそれでいいんだ!』
「え、えぇ。ねぇ、パパ?」
『それで!?屋敷にはいつ帰って来るんだ!?』
「パパ。黙って聞いて。」
『………はい。』
「これから、新川(真城荘が建っている地域)に小野寺財閥のショッピングセンターが建設される…なんて事はないわよね?」
『……………』
「パパ?なんとか言ってちょうだい。」
『……かった……けなんだ。』
「え?ごめんなさい、聞こえないわ。」
『…かんなを、連れ戻したかっただけなんだ!』
…………やっぱりね。
『パパはかんなと一緒に暮らしたいんだ。かんなの住んでいる所をなくしてしまえば、かんなが帰って来ると思って…』
「…パパ、私を高校卒業するまでは自由にしてていいって言ってくれたわよね?」
『確かに言ったが……!』
「そんな卑怯な真似するパパは大嫌いだわ!一生屋敷になんて帰ってやらないんだからっ!」
『か、かんな…!?』
ピッ。
パパがまだ何か言おうとしていたけど強制的に切ってやった。
私を連れ戻したいから真城荘を崩すなんて!
迷惑なのは私だけじゃないのに…!
怒りで震える手を抑えながら、私は真城さんがいる部屋へ戻った。
「ごめんなさい、真城さん。最近お腹の調子が悪くって…。」
「いいんだよ。生理痛かい?」
…真城さんは本当にデリカシーがない。
生理の事は女の子にとって触れてほしくないこと。
それを普通に聞いて来て、ヘラヘラと笑ってる真城さんに、オホホホと笑いながら鳩尾に必殺エルボーをお見舞いしてあげた。