プリンセスと5人のナイト!?



「は、なせ、…」


口ではそう言っているけど、その言葉とは反対に、蒼空くんの大きい手は、私の腕をギュッと握っていた。


何処にも行くな。1人は嫌だ。


私には、その行動は、正にそう言っている様にしか思えなかった。


「…大丈夫、大丈夫だよ。私は此処にいる。」


「…………。」


「蒼空くんは1人じゃない。皆もいるから。」


「…………。」


「だから、何かあったらちゃんと相談して?役に立つかは分かんないけど…それで蒼空くんの気持ちが楽になるなら、私は聞くよ。」


「っ………。」


遂に、我慢できなくなったのか、蒼空くんの目からは大粒の涙が溢れていた。


「…ごめんね。自分勝手に突っ込んじゃって。蒼空くんがどんな気持ちだったかなんて知らないのにさ…」


「…………。」


「ごめん…ごめ、ん…」


ダメ。


泣きたいのは蒼空くんなの。


何で私が泣くの。


これは汗だから。大丈夫だから。


止まってよ…


「止まっ…て…よぉ…」


「……“かんな”。」


私が必死に涙を止めようと、服を伸ばしてゴシゴシと目をこすっていたら、蒼空くんにその手を取られ、そのまま蒼空くんの首に回された。


「…そ、らく…ん?」


「…そんなにこすったら、目、痛くなるだろ。」


「で、でも…」


私は弱いんだ。

泣きたいのは蒼空くんだもん。

いくら私が弱くても、今泣いていいのは私じゃないから。


「…悪かったな。キツい言い方して、お前の事無視して。」


「…蒼空くんは…悪くないもん…」


「いや…でももう無視もしないし、ちゃんと返って来るから。心配かけて悪かった。」


「ホント…だよ…家には、ちゃんと…帰って来て…よね…」


「ふっ。あぁ。ごめんな。」


「心配…したん、だからぁ…」


「あぁ。」


「…もう、何処にも行かない…?」


「あぁ。」


「1人に…ならない…?」


「…あぁ。ならない。」


そう断言する様に言った彼に、心底ホッとした。


「1人は、寂しいから…ね?」


「あぁ。1人は寂しい。」


「1人で抱え込む蒼空くんは…嫌いだよ?」


「ふっ。それは困るな。」


あぁ…どうしよう。


ホッとしたら眠たくなってきちゃった。


「だったら、皆で、一緒に、いよう…」


「…あぁ。分かった。かんな。」


「…ふふ…ようやく、かんなって、呼んでくれたね……蒼空くん。」


「あぁ…どうした?」


「…おやすみ…」


「……おやすみ。」


私は、蒼空くんが優しく微笑む顔を見ながら…眠りに落ちた。
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