プリンセスと5人のナイト!?

私の正体は真城さんには内緒。


ただ本当に家の事情で1人暮らしをしている、ごく普通の女子高生のフリをしてるの。


でも、そんな私の正体は…小野寺財閥って言う超一流企業の社長・小野寺光太郎の愛娘…なんだけど。

家の跡取りはお兄様と決まっているし、私があの家にいる必要はない。


お兄様も、パパもお母様も大好きだけど、とにかくあの息苦しいお嬢様生活を送っていたくなくて家を飛び出して来た。


それはパパとも話はついていて高校を卒業するまでは自由にしてくれると言う約束だった。


でもパパはどうしても私に帰って来てほしいらしく、色んな手をつかって私を連れ戻そうとしてる。


…まぁ、絶対帰ってあげないけど。



そんなこんなで家にも帰りたくなくて、ホームレス生活もまっぴら御免な私。


これからどうなってしまうのだろう…??




「いててて…。
かんなちゃんさぁ、他に行く宛ある?」



エルボーをされた所が痛むのか、鳩尾を擦っている真城さん。


…他に行く宛?ある訳ないから困ってるのに。



「……ないです。」



私がそう答えると、何かを見ながらフムフムと頷く。



「そんで、お金もないんだよね?」


お金なんかパパに頼めばいくらでも出してくれるけど…普通の女子高生設定だから、ここはないって言うべきよね?


「はい。」



「…クスッ。そっかー…」


え…?今、真城さん笑った…?


いやいや。気のせいだよね。


と言うか、なんなのだろう?


さっきから何かを見つめて…


真城さんが見ている"何か"を私も覗き込む。


それは、どこかの見取り図のようだった。


「真城さん、それは?」


「あぁ。かんなちゃん、シェアハウスに住まないか?」


…シェアハウス?

シェアハウスってあれよね、最近よくテレビでやってる他人とシェアするお家。


そこに私が住む…?面白そう!


真城さんは、小さいけれど不動産屋もやっていて、真城さんの所にそう言う電話がよくかかってくるのを私は知っていた。


「家賃は1ヶ月で12万なんだけど、実質住んでるのはかんなちゃんも合わせると6人になるから1人2万円でいい。」


2万円…魅力的な金額じゃない?

これも1つの社会勉強よね!

他人との生活がどういうものなのか見てみたいわ!

私がそこに住むのは即決で、早速明日から引越しを開始する事になった。


でも、今夜は寝泊まりする場所がないからと言う事で真城さんが客間に泊めてくれた。

その日寝た敷布団は初めての感覚で、真城さんの匂いに包まれながらぐっすりと眠れた。


―翌日。


「かーんなちゃんっ!朝だよー!起きてー!」


んん…うるさい…


「ほらほら!早くっ!」


「ん〜…あと5分…」


「……起きないとチューするよ?」


「起きます!」


真城さんの急な変態発言でボーッとしていた頭が一気に覚醒。


真城さん…たまに変な事言うのよね。


私はノロノロと起き上がり、着替え手伝ってあげようか?なんて言ってる真城さんを追い出して着替え始める。

わざわざオシャレする必要はないんだけど、今日は引越しの日。


第一印象は大事だものね!


「わー!かんなちゃん!ふふっ。可愛い可愛い。」


……何だ、今のふふって笑いは。


私が着替えてリビングへ向かうと真城さんが朝食を準備してくれていた。


朝食を食べ終わり、私は真城荘に最後の挨拶をするために外へ出る。


ネーミングセンス悪いし、ボロボロではあったけど…私は貴方のおかげで楽しい生活をおくれたわ。

これからは安らかに新しい人生(?)を送ってちょうだい!私の相棒よ!


「ふぅ…さよならね、相棒。」


「ハッハー!かんなちゃん、真城荘を相棒なんて思ってくれてたの?適当につけた名前でこんなにボロボロなのに?」


こ、この人は…


分かってるなら最初から言えっつーの!


あら、私としたことが…そんなはしたない言葉を使ってはダメね。


でもやっぱりこの人にはエルボーの1つや2つお見舞いしないと気がすまないわ…!


ということで。

ヒールの高い靴で真城さんの足を踏み、真城さんが足に気を取られてるうちに鳩尾にエルボーをかましてあげた―…
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