プリンセスと5人のナイト!?
「……で。誰だ、お前は。」
「……………。」
「早く言え。」
…いやいやいやいや。
人に会ったら先に名乗るのが礼儀ってものじゃないの?
少なくとも私は屋敷でそう教えられたわ!
私はあれから、臭くて汚いリビングに連れて行かれて、ソファの前で何故か正座をさせられている。
…私の前では、茶髪さんが足を組んでこちらを睨んでいて、ピンクさんはつまらなさそうにネイルをしている。
「先に貴方達が名乗るのが礼儀ってもんじゃないの!?」そう叫びたいけど、茶髪さんが怖くて言えない。
この人の目は、なんて言うか…威厳がある。
一度見つめられたら目が逸らせなくなるような…。とにかく怖い。
「……おい。」
また話しかけられる。
怖いよぉ…。
怖いけど名乗りたくはない…。
なんて思ってたらさっきまで黙っていたピンクさんが口を開いた。
「蒼空ぁ。誰だか知らないけど、さっさとその人追い出そうよ。不細工と同じ部屋にいたくなぁい。俺まで不細工になっちゃうもん。」
この人…黙って聞いてたら、さっきから人の事を不細工不細工って…。
可愛いのに腹黒いな…!!!!
「まぁ待て、誠。泥棒だったら警察に通報しないといけねぇだろ。」
……ん?誠?
「あ、あの…」
「あ? ようやく喋るようになったか。」
「そこのピンクさんは、誠くんって言うんですか?」
「ピンク…?」
茶髪さんはピンクが誰の事か分からなかったらしく、首を傾げたんだけど…こんなちょっとした行動も絵になるんだなぁ…カッコいい。
「そ、蒼空!そんな不細工に僕の名前教えなくていいよっ!」
…あーあ。
ピンクさん自分で言っちゃったじゃん。
あれ…?
じゃあ此処に住んでいる女の子は…?
「あ、あのー…ここ此処には何人女の子が住んでるんですか?」
私が再び話しかけたら、「ああ?」と睨まれた。
やっぱりこの人苦手だ…!!
ていうか…女の子は2人くらい居てくれたら嬉しいなぁ…なんて思っていたのに。
「此処に女なんか住んでないよ。」
腹黒ピンクさんは大いに私の期待を裏切ってくれた。
お、女の子が住んでいない!?
嘘でしょ?だって真城さん…男の子だけなんて言ってなかったし、知ってて男の中にか弱いレディを放り込む事なんてするかしら!?
あ、でも真城さんなら…しかねないわね。
「おい、不細工。お前は誰なんだよ?ただの泥棒で変態で不細工ってだけならさっさと出てけ。」
もうどうでもいいと言うように茶髪さんがまた言葉吐いた…が。
茶髪さんが不細工と言った時、私の中で何かがプツンと切れる音がした。
「さっきから不細工不細工って……」
「あ?」
「貴方達!人に名乗れと言う前に貴方達が名乗るべき何じゃなくって!?不細工なのは認めますけどね、私は断じて泥棒でも変態でもありませんからっ!」
私がマシンガンの様にまくし立てると、茶髪さんもピンクさんも、美形な顔をポカンと崩して私を見ていた。
……イケメンな顔がもったいない。
「……飯塚蒼空。」
「…え?」
茶髪さんが何か言ったけど声が小さくて聞こえない。
「俺は飯塚蒼空(イイヅカ ソラ)だ。そこのピンクくて小さいのは藍澤誠(アイザワ マコト)。」
「なっ…!ちょっと、蒼空!なんでそんなヤツに名乗るの!?てか、俺小さくないしっ!」
蒼空くんに、誠くんか…。
誠くんはまだ何か言ってるけど…名乗ってくれたんだから私も名乗らなくちゃね。
「…私は、今日から此処に住む事になった、小野寺かんな(オノデラカンナ)です。よろしくね、蒼空くん、誠くん。」
私がそう言うと2人は目を見開いた。