叶わぬ恋。
「逆に聞くけど何で夏目がここにいんの?」
ズボンのポケットに手を突っ込みながら
矢野くんに聞かれる。
「えっ、あ、うん・・・。路地の奥が気になって迷い込んできた・・・的な?」
「なんだそりゃ」
そうか!矢野くんならあのこと、知ってるかな。
「そういえばさ!」
「うん?」
「鈴森くん。あ、鈴森颯斗くんって・・・ここら辺に住んでたりする?」
「・・・え」
一瞬、さっきまでの柔らかい空気感が消えた気がした。
なんだか・・・聞いちゃいけないことでも聞いたような、そんな。
目の前の矢野くんは、
朝の鈴森くんのような少し気まずい顔をした。
「・・・どうしたの?」
「・・・――――あっ、いや・・・」
「・・・・?」
「え、夏目はさ・・・、何か鈴森に聞いた?」
「え、ううん。別に?」
「そっ、そっか・・・」
矢野くんは少しホッとした顔をする。