叶わぬ恋。
side 鈴森颯斗
「・・・わたしのお弁当、あける!」
「・・・へ?」
いきなり横からそんな言葉が聞こえた。
俺は思わず変な声を出してしまう。
「え、あ、いや!それはいいよ!夏目さんの弁当なくなっちゃうじゃん!迷惑だし!」
「いいよ?わたしね、実は2年間、購買で買ったことなくてさ。前から食べたいな~とは思ってたの」
夏目さんの顔を見てみると、
気を遣っているようには俺には見えなかった。
本当に心からそう思って笑って言ってくれているようだった。
「はい!」
まだ朝なのに、夏目さんは鞄からオレンジと白のドットの弁当袋を
俺に差し出してくる。
オレンジ色とか、夏目さんらしいな、なんて思ってしまう。
それを手に取った俺は、少しの間、それをじっと見つめていた。