彼がグラドルを嫌う理由
それは、さっき編集長に渡したはずの写真……
「なんで持ってるのっ!」
「これ、俺用」
「返してよ」
「俺の休日返上したんだから、やっぱこんぐらい貰わないとね」
私はぴょんぴょん跳ねて取ろうするが、彼は背が高くて全然手が届かない。
「ねぇ!本当、返して!」
「いいよ」
意外と呆気なく写真が手渡された。
ホッとしたのはつかの間………
「……んっ!……」
唇に柔らかな感触が伝う。
「じゃあなっ!」
私の唇を奪って勝手に去って行く彼。
私に背を向けたまま手をヒラヒラと振る。
もうっ!
なんなの……
くしゃりと自分の前髪を掴む。
夜の静寂な街並みに心音だけが激しく鳴り続けた。
思えばこの時、唇と共に私の心も奪って行ったんだと今なら感じる。