愛すべきフレーバー
愛しのチョコレート
「アイスクリーム、食べに行こう」
と言って、彼はするりと私の手を握り締めた。
そして私の答えを聞く前に、颯爽と歩き出す。ぐいっと繋いだ手を引っ張って。
彼が向かったのは近所のショッピングモール。一階のフードコートにあるアイスクリーム屋さんを目指す彼の足取りは、弾むように軽ろやかで楽しそう。今にもスキップするんじゃないかと思うほど。
私は彼に手を引かれるまま。
彼の歩幅について行くのに必死だというのに、彼は鼻歌でも歌い出しそうな涼しい顔をしてる。
もう少し、ゆっくり歩いてよ。
文句のひとつでも言ってやろうかと思う気持ちが、浮かんでは消えていく。
だって彼が時々振り向いて、きゅっと口角を上げるから。そんな彼の顔が可愛いから。
彼が振り向くたびに、文句を言い出しそうになる口を噤んで微笑み返す。何事もなかったかのように、彼に歩幅を合わせながら。
ダメだ、
彼の笑顔には敵わない。
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