愛すべきフレーバー


ショーケースの前に立った彼は、ひと目覗いただけ。すぐに顔を上げた。



ちらりと私を見て、
「決まった?」と問いかける。
もちろん、私の大好きな笑顔で。



「うん、ちょっと待って」



私は答えて、ショーケースを見渡した。前に来た時に、彼と食べたフレーバーを思い出しながら。
さて、今日は何を食べようか。



彼はもう、何を注文するか決めている。
さっき覗いた僅かな時間で選んだのではなくて、ここに来る前から既に決めていたのだ。



ショーケースを覗く私の視界の端には、常に彼の顔が映ってる。早く決めろとは言ったりしないけど、見られているというだけで焦ってくるじゃない。



後から来たカップルが、私たちを追い越して店員さんに注文している。何を注文しているのか、そちらに耳だけ傾けてみた。



よし、私も決めた。





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