奏デルハ喰血ノ調ベ
それでもまだ逃げようとする気力は残っていた。
片手に僅かな力を込め、精一杯の抵抗を試みる。
「っ……待って……!!」
「心配するな、殺しはしない。
ちょっと、傷をつけるだけだ」
しかしそんなほんの少しの抵抗も
虚しく、あっさりと手首を掴まれてしまった。
「離してっ……!!」
「冗談を。
折角捕えた極上の獲物を、
離す訳無いだろう?」
優しく、残酷に言い放たれた言葉。
それと同時に、ひんやりした彼の指に力がこもっていく。
「いいっ……!!」