彼女を好きなワケ 【逢いたい~桜に還る想い~・番外編】
「………かか様も、一緒に天からおりてこないかな……」
「────…………」
私は、返事の代わりに榎世の頭をそっと撫でた。
齢(よわい)八つの子に、こんな複雑な表情をさせている。
────君のかか様は、君のことを望まなかった。
憎いとさえ思っていた。
お腹にいる君を、“魔物”と罵った。
そして、“君”という存在が生きていることを知らないまま………死んでしまったのに。
それでも、榎世……かか様によく似た君に、生きてほしいと願った───私の罪。
「………すまない」
口から零れ落ちた呟きに、
「あら、謝ってばかりいると、老けてしまうんですってよ?」
おどけた表情で榎世が笑った。
………ああ、その瞳……
「庵主様がおっしゃっていたわ」
………日に日に、椿に似てくるな……
「……寒くなってきたな。榎世、部屋の中へ入ろう」
ひょいっと榎世を抱き上げて、縁側から立ち上がった私の目に、ふと“赤”が過った。
ぽとりとその首を落とした、真っ赤な椿の花………