彼女を好きなワケ 【逢いたい~桜に還る想い~・番外編】
………猫。
泉へ続く道なき道の入り口に、真っ白な猫がいて、こちらをじぃっと見ているのに、気がついた。
猫は俺と目が合うなり、「にゃあ」とひとつ鳴いて、茂みに消えた。
「今の………」
何かに囚われる。
───今の猫を、知っている。
思い出せない……でも、
あの猫が向かった先……それは……きっと……
おかしな既視感に引っ張られるように、俺は白い猫の後を追いかけた。
いつかも、猫を追いかけて……そう、この先にあるのは……
焦っている俺は、根っこや草に足をとられながら道なき道を進み、
ようやく視界が拓け、見えたのは、
淡い薄紅の吹雪………
強い風に桜の枝がしなり、花びらが舞い散る、その薄紅の中に。
────遥かな幻。
あれは………
「………み………」
くらり、目眩がして、膝をつく。
「………っっ……」
頭に激痛が走り───俺の意識は、大きな何かに呑み込まれていった……