彼女を好きなワケ 【逢いたい~桜に還る想い~・番外編】
「……澪………」
ぽつり、こぼれ落ちたその名前に、胸がかきむしられるような痛みを覚える。
俺の───前世での、妹で……
一番愛しい人………
突然還ってきた前世(カコ)の記憶に、
懐古の念と、
潰されそうなほどの、罪悪感と嫌悪感に囚われて。
そう……何もかもを犠牲にしてもいいほど大切で、愛していたのに。
一番犠牲にしたのは、澪自身だったんだ。
激しい後悔が身体を巡り、吐き気すら感じる。
そんな中浮かんだのは、───トーコさんの涙……
生まれ変わっても、泣かせてるなんて。
辛い記憶しか、刻めなかったなんて。
なんで謝るの? 何に謝ってるの?
謝るのは、真(おれ)の方。
ずっと続いていくはずだった澪の人生を奪って、傷つけて、
無惨に終わらせてしまったのは、俺自身。
ごめん、澪……
ごめん、トーコさん………
桜吹雪に、いつの間にか弱い雨が混じり、
後悔だらけに苛まれる俺を濡らしていた…………