彼女を好きなワケ 【逢いたい~桜に還る想い~・番外編】
「おねーちゃん、 買い物にむちゅうで、どんどん行っちゃうんだもん。
すぐに気づいてよかったぁ……いくちゃん、おかーさんのとこ行こう………」
トコちゃんがぼくの手を引いて歩きだそうとして、
………ふと、立ちどまった。
手を───トコちゃんの手をにぎりしめたまま、
ぼくが動かなかったから。
「いくちゃん……?」
トコちゃんがぼくの顔をのぞきこむ。
「う………」
「え?」
「………うわぁぁぁぁんっっ!!」
顔を真っ赤にして泣き出したぼく。
みるみるトコちゃんの目がまるくなる。
「あー………もうだいじょうぶ……だいじょうぶだよ、いくちゃん」
トコちゃんがギュッとして、背中をトントンしてくれた。
その手がとっても優しくて、もっと涙が出てきた。